龍を見た男

 あけましておめでとうございます.

 年を越しました.年越しにこんな駄文を綴っているわたしは最高のぜいたくをしているのでしょう.論文を書く合間の気分転換に書いています.

 新年一発目にふさわしいおめでたい男をご紹介したいと思います.
 
 実は,そのオモシロイ男は高知にいます.何がオモシロイって,なんせ見た目がファニーなのです.とがった眉毛,切れ長の目,ふっくらした頬にちょび髭,見た目怖いのにどこかファニーなギャップ著しい彼は,これがまた話し出したら止まらないのです.まさにマシンガントーク,息継ぎをどこかでやっているのか?と不思議になるくらい言葉が溢れだし,畳み掛けてきます.もう,その勢いとしたら,ダムの放水なみなのです!!これだけで,だれにも真似できない唯一無二の能力を持った男であることが分かります.その彼がスーツを着たら,これはもうタマゴ男爵.やや短い丈の上着とパンツ,襟に埋まる顎,前を歩いていてもしゃべり続ける彼の後頭部には口がある!?もう,すさまじい個性の塊なのです!!

 そんな彼の態度と見た目はもうベテラン.もう,20年くらいのキャリアを持つと言っても不思議ではない堂々とした男です.しかし,本当のところは20代の若手なのです!!誰にも信じてもらえていませんが(笑)

 そんな彼ですが,人懐っこい!!顔を近づけてくるのは勿論,いつも間にか肩を組まれています.そんな私もいつの間にか「ちゃん付け」で呼ばれています.いつの間にか,すっと距離を近づけてくる,スッと入ってくる,でかい図体に似合わぬ忍者のような男なのです.いつの間にか心を奪われてしまいます.

 そうやって,気付けば日本でも有数の有名人になっていました.「うーん」確かに稀有な才能の持ち主であり,個性の塊であることは認めます.それでも,ここまで一気にブレイクするとは・・・.「うーん」何が彼をここまで押し上げるのか・・・.その謎が,わたしの頭を占めました.そうです,もう彼のアクの強さに染まってしまっていたのです.とりつかれていたのです(笑)

 これは,何かある!!

 ひらめいた私は,彼の人気の秘密を探索してみることにしました.

①見た目
 先にも述べたようにファニーマン!!一度見ると頭にこびりつくあのはにかむ様な笑顔.もう忘れられない!!

②マシンガントーク
 とにかく相手を笑わせる.言葉がつながるつながる.畳み掛ける畳み掛ける.力づくでも笑わせる笑わせる.無理でも勝手に笑ってる.でありながら,気遣いの声掛け.

③あまりあるいかつさ
 いいとこばっかりだけど,それでもそれ以上に怖い見た目.前に立つだけで自然と足が震えてくる.

 「うーん」いろいろ理由はあるが・・・確かにこれくらい強烈なら・・・でも,まだなんか足りない.ここまで,全国的に有名になった男!!ブレークした男!!一気に来た!!なぜなんだ!?

 そんなある日,彼から聞いた話を思い出したのでした.
 
 そう,それはある春の日のことでした.前の日からの降り続く雨に水かさが増え茶色く濁った吉野川の横を走っているときのことでした.黒い雲に薄暗い街を走る彼の運転する車の助手席にわたしは座っていました.どんよりとした雰囲気に軽い眠気を感じた時に彼が言ったのでした.「実は,ぼくここでデッカイ魚見たんですよ」彼は,突然そんなことを呟いたのでした.釣り好きの彼のこと,わたしは何の気なしに「へぇーでかい魚.すごいねー.シーバスかなんか?」河口に近い吉野川の川幅はとても広く,大きな魚が居てもおかしくないよな.釣ったんならスゴイな.とぼんやりと思いながら,彼の言葉を待ちました.ルアーかな?次の質問も浮かんでしました.でも,彼のこたえは,完全にわたしのイメージを裏切るものでした.

「いや,そんなんやないです.川の真ん中にかなりでかい.魚がムチャクチャ早く泳いでいたのを見たんです」

 彼の言う魚は,50m級の大魚でした.わたしは,一瞬考えました.でかい魚,ネッシー??なぜか,超ど級の鯉が思い浮かびました.そして,その顔は,彼の顔がくっついていました.そこまで連想が続き,やべー!!ッと思った時でした.

「信じてもらえないかもしれませんけどね.そのときも,おかんの車に乗ってて,おかんに言ったけど見えんって言われましたし・・・金色の魚だったんですよね」

 そうか!でかい魚がいたんだな.お母さんには見えなかったですね.不思議な話だったんですね.

 その時はそれで終わっていたのです.が,しかし・・・.

 年末彼と話したとき,彼の干支がわたしと同じ辰だと分かった時に,ふっ,とわたしに考えがおりてきたのでした!!「あっ!!分かった!!」きっと彼は「龍を見た」に違いない!!それで,こんなにイケイケなんだ!!まさに彫り龍!!わたしの予感は,確信に変化した瞬間でした.

 その日,彼はもつ鍋を食べ,地鶏を喰らい,ステーキを飲み込み,ライスの大盛りを流し込み,アイスコーヒーをがぶ飲みしていました.きっと,彼の中には龍が住んでいるのでしょう.車のヘッドライトをほぼジャストサイズで浴び,神々しく輝くその姿を見た時,彼の中の龍をみたような気がしました.いや,その存在を強く感じました.

 みなさん.ぜひ,そういう目で彼を観察してください.そして,彼の中の龍を捉えた方は,ご一報ください.インスタに載せましょう(笑)

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