抱えられるということ―留めておける力―

 わたしたちは,何か問題にであうと,何とかしてそれを解決しようとします.問題の原因やそれがもたらす影響を分析し,それに対してその問題が問題化しないように対処して,問題の影響力を自分が対処できる範囲のものにしてコントロールしようとするのです.それに対して,新しいアプローチが提唱されています.そのひとつが,吉備国際大学の京極真先生が提唱する「信念対立解明アプローチ」です.詳しくは,下記の書籍をお読みください.




 信念対立解明アプローチでは,問題を「解決」するのではなく,「解明」することで問題を問題として成り立たせなくします.これは新しい考え方で,問題を解決するという対処を生み出すのではなく,そもそものもんだいが成立する条件を解明することで問題自体を解体するとするという発想です.人間関係のような難しい込み入った問題には,すべてに対応する解決という方法は,とても大変で,莫大なエネルギーを使います.それに対して,問題の根本,それ一本を解明し解体する解明アプローチに注目が集まるのは,価値が多様化しより複雑なシステムとなった現代社会において自然なことでしょう.

 しかし,感情が絡んだ場合,解明は困難になるように思います.「わかっちゃいるけどやめられない」状態となり,頭では,解明されていて理屈は理解できているのですが,どうしても受け入れられず信念がくすぶり続けることがあるケースを経験します.信念対立解明アプローチの切れ味は鋭く,自分で自分の状態に気付くことができるため,より自分自身を気付つけることにもなりかねないのです.実際,臨床場面ではそのようなケースも経験します.その際,外の対人関係における信念対立は解明されているため,それを自己内に取り込み,内的な信念対立,すなわち葛藤に似た状態となります.この取り込みについては,先のブログで書きました.(自己内での信念対立に対する一側面

 その様な場合,どうするのか?

 私の提案は,抱えることです.これからのストレス社会における生き残り戦術は,困難な状況やどうしようもない環境に身を置くことになった時に,解決や解明に取り組みながらも,そのどうしようもない状況を抱えることが重要になるのではないかと思います.
 何か解決や解明すること,コントロールすることを一旦留めておいて,それをそのまま感じること.それが重要ではないかと思います.では,そのためにどうしたらいいのか?そのヒントは,また明日.

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