熊:ご隠居,ご隠居,ご隠居~!!
老:おお,熊さんか,どうなすった?そんなに慌てて.
熊:いやぁね.そこで,八の奴と会って,最近どうだい,なんて立ち話してたところ,なんでも最近,八の奴は健康法ってのにはまっているらしくて.バカは風邪ひかないってのに,何が健康法だってんだ,何を気にしてんだかわかりゃしねぇ.
老:おい,おい.何怒ってんだい.まぁ,でも,WHOによると健康ってのは,ただ病気じゃないってことでないのだから,八のいうこともあながち間違いじゃないのかもしれないね.
熊:えっ,なんですかい?そのみそ汁の具みたいなのは?
老:みそ汁の具?そんなこと言ったかい?
熊:ええ,WHOなんて,フーでしょ?
老:麩じゃないよ.何を言ってんだい,まったくお前さんは・・・.いつもそうやって,早とちりして.ところで,っていうと何かい?お前さんは,健康法のことで八と言い争いになったということかい?
熊:あっ,そうそう,そうなんですよ.なんでも,あいつがいうことにゃね,朝飯なんてのは食わないほうがいいなんて言いやがって.そんな法があるかって,あたしゃそう思うんですがね.朝からしっかりおまんま食って,だから力が出るんだって,昔からそう言われてますでしょ?でも,八の奴ゆずりゃしねぇ~.「最新の科学では・・・」なんて言いやがる.RCTがどうだの,<0.05だからだの,なんだかよくわからねぇ横文字や数字ばかり並べやがって・・・.
老:へぇ~,八はずいぶん勉強しているんだねぇ~.
熊:勉強も何も,何だかよくわからないことばかり言ってやがんで,あたしゃ言ってやりましたよ.「おい,八.お前はそういうけど,昔から朝飯は食わなきゃなんねぇ,って言われてきたんだ.ずっと昔からの言い伝えなんだ.伝統なんだ」ってね.ご隠居,そしたらあのインテリ野郎,なんて言ったと思います?「君,電燈なら,スイッチ押せば消えるよ」なんて・・・.あたしゃ悔しくて,悔しくて.
老:まぁ,まぁ.そうか,お前さんたちは朝ご飯のことでもめたんじゃな?それで,お前さんは言い負かされた.なるほど,八はよく勉強しているようだ.科学的に言われていることは確からしいように感じるもんだからな.こりゃ,お前さんのほうが,分が悪いわな.
熊:ご隠居~.そんなこと言わないでくださいよ.あたしゃ,ご隠居だけが頼みなんですから.ご隠居さんのこと,みんなが何て言ってるか知ってますか?生き字引ですよ,生き字引.何でもよくご存じで,さすが長いこと生きてらっしゃる.昔のこともよくご存じで,縄文時代から生きてきたんじゃないかって.
老:おいおい.それじゃ,まるで,わたしがシイラカンスみたいじゃないか?
熊:へい.それで,生き字引のご隠居を地引網でごぞっと引き上げて・・・.
老:おいおい.滅多なこと言うもんじゃないよ.なんだか物騒だね,お前さんは.
熊:お願いしますよ.ご隠居.あなただけが頼りなんです.シイラカンスの時代から生きてなすっているご隠居なら,言い伝えにも詳しいはずだ.何とか,八を言い負かしてやりたいんですよ.そのためなら,飯食ってる場合じゃなぇ.
老:おいおい.もうムチャクチャやないかいな~.お前さんは,飯を食う方じゃないのかい?
熊:あっ,そうだった.
老:そうだったって,お前さん.それにしても,信念対立ってのは怖いもんだね・・・.ここまで,ひとを見失わせるとはね~.言っていることがアベコベになってしまって・・・.はぁ~.まぁいい.ところでな,熊よ.お前さんの言うこともあながち間違っちゃいないとわたしは思うがね.言い伝え,つまり伝承だな.それには,確かに一理ある.だから,長きにわたって語り継がれてきたんじゃろうからな.
熊:でしょう.そう,でんしょう~.
老:こらこら,お前さんは,時々そんなのを挟んでくるな~.まぁいい.熊よ.お前さん,なんで朝飯は食うべきだって言い伝えが今に至っているんだと思う?
熊:えっ,来たよ来たよ.ご隠居の得意技だ.いつも,こうやって,おいらに考えさせて,ご隠居は楽すんだからな~.あのね,わたしゃ,それが分からなくて八の奴にやられてここへ助けを求めに来てんですからね.分かりませんよ!答えませんよ!!絶対答えませんからね!!!
老:おいおい.お前さん,何を意地はってるんだい.困った人だね~.じゃあ,お前さん.朝ご飯食べないと,どうなるかな?
熊:そりゃ,腹が減りますよ.腹が減って,腹が減って.もう嫌になって,この世が終わるんじゃないかって・・・.
老:おいおい,えらいとこいっちゃったよ~.そこまではないとしても,どうやら健康ってわけじゃなさそうだね?
熊:そうですよ.それにね.おいらがおまんま食べないと米屋がおまんま食い上げになっちゃいますよ.腹減って,イライラしちゃうと,うちのかかあにも当り散らしてストレスかけちゃう.そうなると,あたしゃ,かかあの奴にボコボコに・・・.どうしましょう,ご隠居さ~ん(涙)
老:何言ってるんだい.熊,お前さん,勝手にすすめるんじゃないよ.まぁ,でもそういうことだ.
熊:へぇ,ありがとうございます.でも,そう考えると,なんなんでしょうね?朝飯って奴は?おいらは,毎朝起きたら腹が減っているけど,前の日に食べ過ぎたときゃ,腹が減らない.そんな時も,かかあは朝飯を用意してくれていて,そんな時は地獄になっちまう.おいらが,おまんま食わなくても,米屋はそれでつぶれやしねぇ.米粉パンなんて作って売っちまう.なんなんでしょうね?
老:なんだい.急に哲学的になったねぇ~.
熊:いやぁ~.おいら,八と言い合いをしてるときにゃ,ぜってい朝飯は食うべきだって思ってたんですけどね.今じゃ,よくわからなくなっちゃって・・・.いろいろ考えていると,八の言い分も分かる気がして・・・.あいつの言い分も確かになって思えてきたりしました.うーん,何が正しんでしょうか?
老:その移り変わりが大切なのかもしれんな.その移り変わりにこそ,本質があるのかもしれないな.形あるものは,必ず変化する.お前さんは,変化を受け入れることで本質に近づいたのかもしれんな.そして,その本質も次の疑問や新しい形との出会いによって,またその形を変える.その移り変わりこそ,お前が最も欲しいものじゃないかい?お前が,最も確信できるもんじゃないのかい?
熊:おいら,八の奴と出会ってあいつと話して,ご隠居のとこにやってきてご隠居と話をして,それで,それで,それで,そっかぁ~.ありがとうございやす.やっぱりご隠居だ!!すぐに,八のところに行かないと?朝飯の話だから,早くいかないと腐っちまうんで!!
老:おいおい,お前さんそんなに慌てんでも.大丈夫かい?八とちゃんと話せるかい?
熊:勿論ですよ,ご隠居さん.そんなことは朝飯前.
おあとがよろしいようで.
日本人の伝統や世界が注目している日本の「本質」は、大切にしていきたいですね。・・・・
返信削除「待つ」「ひととの関係性」「ユーモア」「かたられない本質」「かららない本質」「あいまいさ」
「日本の伝統を作業療法に活かす・・・ために」を いま、思案中です。
大西先生,コメントをありがとうございます.身体に刻み込まれた文化をどう感じ取るのか?ともに思案させてください.また,お話しできる機会を「待って」います.(笑)
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