MBOTにおける基本に戻る意義

1.MBOTとMST

MBOTとは,作業の持つマインドフルネス要素に注目した方法です.ここでいう作業とは,家事活動や趣味活動(芸術,生産),身体活動などの日常的または非日常的に行う諸活動を指します.

 マインドフルネスのスキルトレーニング(MST)は,呼吸,歩く,ボディスキャン,ヨガなどをとおした瞑想を実施することで,マインドフルネスの状態や姿勢を強化します.そのMSTでは,それを行うための特別の時間を確保し行います.この特別の時間が,効果をもたらすのだと主張されている方もおられます.

 一方,MBOTでは,例えばOTプログラムのように特別な時間としてMBOTを実施する場合と台拭きをするときにマインドフルネスを意識して実施するなどのように日常の中でMBOTを実施する場合があります.どちらの場合も,MBOTのフェーズ1,フェーズ2の効果は見られるます.

※MBOTのフェーズとは? ―MBOTを実施したときの主観的体験について―

 MBOTを実施した際に対象者は,①導入されたMBOTへの反応,②治療的な反応,③在り方の探索,という3つのフェーズを体験することになります.また,それぞれのフェーズではマインドフルネスを促進するポジティブな要素とマインドフルネスの促進を阻害し危機をもたらすネガティブな要素があり,対象者はそれぞれの間を揺れ動きながら,次のフェーズに止揚していきます.この時の促進する要素がいわゆる「効果」というものになります.また,フェーズ2とフェーズ3の間には,基本に戻ることや仲間の存在が必要であることが分かっています.
参照:織田靖史, 京極真, 西岡由江, & 宮崎洋一. (2017). 感情調節困難患者がマインドフルネス作業療法 (MBOT) を実施した際の内的体験の解明. 精神科治療学32(1), 129-137.


2.副産物としてのMBOTのポジティブな要素(効果) 

MBOTで経験するフェーズ1,フェーズ2の効果はいずれも副産物のようなもので,「感じているものを感じるままにあるがままに感じ体験する」ことをとおして生まれてくるものである,これ自体が目的ではありません.目的はあくまでもあるがままに感じ続けることですので,効果と感じられるものは,あるがままに感じる体験を実施した経験による副産物であるといえるでしょう.

 しかし,MBOTをとおしてポジティブな経験をすると,それが成功体験となりよりその感覚を求めるようになってしまうことがあります.また,特別なことをしているという高揚感は,「特別なことを経験した私だからこうでなければならない」と自分を縛る思考につながりがちです.これでは,こころの柔軟性や創造性は失われ,画一的な思考とそれに反応した行動に支配されてしまいます.

3.基本に戻ることの効果

ここで重要なのは,「基本に戻る」ことです.ポジティブなことネガティブなこと,どちらもあるかと思いますが,それを感じたときにはニュートラルな位置に戻ってくることが必要です.どちらかに触れたときにはそれを味わい,そして静かに手放すのです.手放すと,それは流れていきます.そのまま,それが赴くままに流してしまうのです.手放さず掴んだままいるのを執着と呼びます.

4.執着の危険性

最近では,良いことの意味で使われる「こだわり(拘り)」も「執着」です.確かに最近では,いい意味でつかわれますが,拘りが強すぎると余裕がなくなり,自分を縛り,周囲の人も自由を奪われてしまいます.創造性も柔軟性も失い,息苦しくなってしまうのです.

4.基本に戻ることの意義 

ですから,手放すことが重要となります.これは,ニュートラルでいることがポイントです.ポジティブかネガティブにふれたとき,すなわち何らかの価値判断を現象におこなっている時に執着は生まれます.ですから,できるだけニュートラルでいれられといいでしょう.

 このニュートラルでいるためには「基本に戻る」ことが重要なのです.マインドフルネスの基本は,「あるがままに感じ続けること」「断定したり価値判断しないこと」「反応しないこと」「自分の中に浮かび上がる感覚のみに注意を向けること」「とにかくそれ(瞑想)を続けること」ということになりますし,「今にとどまること」となります.すなわち,得られたポジティブな副産物からの快刺激にとらわれ,頭の中にイメージに置き換わらずに,あるがままに現象を感じ続けることがポイントとなるでしょう.これを続けることで,執着という何かに注意・関心(欲望)が向かい続けている状況から離れ,自由に今を生きることができる,すなわちニュートラルでいることができるでしょう.

 特に,日常の中で行われるMBOTでは,日常に埋没しないように時折基本に戻ることが重要でしょう.また,特別な時間で行うMBOTでも,やはり特別視しすぎないように基本に戻り自分の立ち位置を確認することが求められるでしょう.

5.まとめ

MBOTは,特別な時間としての実施する場合と日常の中で実施する場合があります.そのいずれでも,効果は感じられますが,それに執着すると逆効果になってしまいます.それを防ぐためには,基本に戻ることが推奨されます.基本に戻ることは,特別な時間で行う場合も日常で行われる場合にも,自分の立ち位置をニュートラルに保つために重要な対処となることが期待されます.
 





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