文脈を読むことは目標共有にどんな影響をもたらすか

 連日,大変な猛暑が日本を襲っています.まさに酷暑です.そんな中,昨日は『目標を考えるうえで大切にしていること』(→元記事はこちらから)と題してblog記事を書きました.今日は昨日の記事でも宣言していた通り,文脈を読むことについて書きたいと思います.

1.文脈について
 文脈とは,文と文とのつながり具合や筋道,そして論理的な構成などを意味する言葉です.英語では,Contexst(コンテクスト)と呼ばれるものです.コンテクストとは,言語学,情報科学,マーケティング,心理学など幅広い分野で使われている概念であり,しかし共有されているのは,「状況や行動が起こる筋道や背景を理解する」といったことになるでしょう.

2.文脈を読むということについて
 文脈を読むということは,「語られる言葉の背景にあるものやその言葉達を貫く筋道を把握し理解する」ということになると考えられます.これは臨床では,「言葉の裏にある背景(状況や感情など)やその言葉を発したひとの思考(価値観,信念など)を理解する」というイメージになるでしょうか.ここでのポイントは,言葉面に流されずに,「なぜ,このひとは今こういうことをわたしに伝えているんだろうか?なぜこう言ってくださったのだろう?または,なぜこう言わなければならないのだろう?」と複眼的な視点から考えながら聴くということでしょう.

3.事例紹介(匿名性のために文脈を崩さない程度に加工してあります)
 統合失調症と診断された10代後半のある男性との作業療法場面です.なかなか目標が定まらず,時間が流れていました.9か月たったある日,「携帯電話が欲しい,使いたい」とそのひとが言いました.勿論そのまま目標にすることもできましたので,携帯電話について使い方や選び方を話しながら,「どうして今それがほしいと言われたのだろう」ということについて考え話しました.そうすると,「僕らの歳で携帯電話を持っているって当たり前でしょ」と本人はおっしゃいました.ご本人は,「当たり前の生活がしたい」と思っており,それをとおして「ひとりの男として認めてほしい」と考えていらっしゃったようです.そこで,目標を「当たり前の生活をする」ことにして,「1人前ってどんなイメージ」かを確認して,「仕事をしている姿,自分で稼げる」と言われたので,「就労」を目標にし,ご本人,家族,医療チームで共有することになりました.その後,それにその目標に向かって取り組み,無事達成されました.

4.まとめ
 文脈を読み,それを共有することで,「したいこと,しなければならないこと,することを期待されていること」が明確になり,より洗練された目標となるのではないかと考えています.

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