これまで,マインドフルネス作業療法の世界観についてお話ししてきました.そこで,今日は実践についてお話しさせていただこうかと思います.なお,作業療法ジャーナル(織田靖史. (2017). 作業にひたり, 作業を味わうことで, ひとは救われる—マインドフルネス作業療法とは何か. 作業療法ジャーナル, 51(3), 244-247.)に書いていますのでそちらもご参照ください.
MBOTプログラムとして実施する際には,大きく2つのパターンがあります.1つは独立したプログラムとして実施すること,もう1つは既存のプログラムの中で(用いて)実施することです.
既存のプログラムを用いて実施する方法は,普段作業療法プログラムとして実施している作業(作業活動)をマインドフルネスを意識しながら実施するという方法です.例えば,書道の時間に,腕を動かす感覚や筆を持つ手の感覚,墨の匂いや和紙の感覚などに注目して実施します.そして,もしその時に考えや感情などが浮かんで来たら,それもそのまま感じるようにするのです.自分のこころの中に現れてくるものをそのまま感じるようにします.山根寛先生が言われている指に墨をつけて字を書く「指習字」などを用いることも,MBOTを実施する上では,より効果的でしょう.(まだ実際には少数の方としかしておらず,織田の主観的な感想が強いです.)(指習字については下記の文献にのっています)
基本的には,どんな種目でもやり方の工夫次第で実施できると考えていますが,(織田の主観です)やはり,合う合わないはあり,それに加えて,副作用(考えられるリスク)についても把握する必要があります.いきなり,イメージが強いものを実施することや閉眼で実施する者は,トランスやフラッシュバック(ネガティブな記憶・イメージの再現)の可能性や解離,不安定さの感じやすさなどのリスクが考えられます.
どんな作業がMBOTの実施にあうのか?という疑問に関しては,吉備国際学大学院(京極ゼミ)に所属する福田浩さんが,現在修士論文の研究で解明中です.いい結果につながりそうなので,発表されましたらごちらでもご紹介したいと思います.
次に,独立したプログラムとしてMBOTを実施する場合です.この場合,マンパワーやプログラムコストがかかります.
物理的構造ですが,できれば窓のある個室が好ましいと感じます.そして窓には遮光カーテンがあること,ある程度の広さと空調,静かさの保てる環境があればより好ましいでしょう.部屋には間接照明があると音楽やストレッチの時には,程よい明るさとなりやりやすいのかもしれません.
グループで行うことが多いと思いますが,人数は5~12人程度がやりやすいかと思います.
スタッフは,2人が理想だと思いますが,1人でも可能です.1人が進行役として時間の管理や実施の際のガイドをし,もう1人が参加しながら書記をしたり,何かトラブルがあった際の対応をします.
進め方は,
①メンバーやスタッフの近況報告をします.MBOT中は,メンバーもスタッフも同じ立場ですのでお互い行うようにしています.もちろん,リーダは,その「場」を守り,実施の際の「ガイド」をする役割があり,立場上同じというわけではありませんが,その「場」に「集う者」としては同じ立場であることを心得ておく必要があります.
②1つ目のエクササイズを行います.まず,作業活動を実施しているの際の身体感覚に注目し,注意を閉じていきます.そして,その感覚に浸り,それを味わった後に注意を開いていき,感覚をより味わいます.その際には,いろんな感覚を同時に味わうのではなく,自分の中に表れてくるものを1つずつそのまま感じるようにします.自分の中に立ち現れてきた感覚をあわてて言葉にせず,感覚そのものをじっくりと味わって,それが言葉に置き換わり,言葉で括られる(山根)のを自分の中に感じてその言葉を意識します.そして,また感覚に戻ります.自分の感覚やそれに伴う体験が「正しいのか間違っているのか」「いいか悪いか」など(価値)判断せず,先にも述べたように感覚をあわてて言葉に置き換えるような断定をすることなく,自分の体験したこと,感じたことがすべてであり,それをそのまま感じるようにするのです.
③エクササイズの終了後に,その時の体験を参加者でシェアリングします.誰かに話をしてもらい,それをみんなでマインドフルに聞くのです.リーダーもその体験を価値判断せずに受け入れます.その時には,内容ではなく,文脈を聴くようにします.
④時間があれば,②~③を繰り返します.
⑤全体の感想を聞いて終了します.その際もシェアリングで書いたようなことを守ります.
1セッションの流れは,以上です.
人数にもよりますが,①~⑤までで,90分~120分ぐらいになります.
何より実施する際には,スタッフもマインドフルな状態であること.そうして,マインドフルネスを意識していること.リーダーは,マインドフルネスの実践者であること.が大切でしょう.
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