例えば,毎日する歯磨き,毎日飲むコーヒー,何かをするという「行為」と呼ばれる大枠で捉えるといつも同じルーティンワークとなりますが,その瞬間瞬間移り変わる,「今」を味わうと,その瞬間瞬間に違う現実として体験する自分がいることに気づきます.歯磨きも,一回一回磨くたびに違う感覚が自分の中に立ち現れて来ているはずですし,コーヒーも始めて口に含む瞬間とその後では,違う感覚を体験するはずです.
その意味では,そのひとが体験する一回限りの体験を研究することは,重要になります.しかし,ではそこに普遍性は見出されるのか??
作業療法の先人たちは,事例をあるがままにしっかりと研究し,その経験から見出される現象学的知見を持って,臨床への応用を模索してきました.しかし,それは,RCTという強力な説得力のある方法を中心としたエビデンス主義の医療のパラダイムにおいて,自ら自信を持てない状況を迎えることになりました.しかし,一回限りの体験である事例を見直し,そこから知見を得ることは,関係性の中で発展する作業療法の臨床を実施する上では重要な方法論であることは間違いありません.
具体的には,下記の本に書いてあります.
この本では,臨床心理の立場から考察された事例研究の重要性や方法論が述べられています.作業療法は,対象者の一回きりの経験を対象とした介入を実施します.その対象者の経験は,作業と呼ばれ,客観的に観察される行動と主観的に対象者にあらわれる内的体験によって形成されます.またその作業は,主体である対象者にとっての他者である治療者や周囲の人々との間で影響を相互に与えあいながら起こる現象であります.すなわち,作業療法では,客観と主観,そして関係性を捉えることが重要となるのです.その意味で,RCTと同様に事例研究の意義も大きくなります.わたしたち作業療法士は,量的研究と質的研究を駆使して,対象者の役に立つ知見を見いさしていく努力が必要でしょう.わたしもその一因となるべく努力します.
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